犬は月をめざす

もっとブワァー!ときてボーンと!

ことわざって素晴らしい!『ことわざの論理』

ことわざの論理 (ちくま学芸文庫)

ことわざの論理 (ちくま学芸文庫)

『思考の整理学』で有名な外山滋比古さんが、ことわざを語っている本。 ことわざを語る本なので、それはそれは沢山ことわざが出てくるのですけど、出るわ出るわ、知らんことわざの山。

わたしはバカたれなので 「船頭多くて船、山に登る」 「娘は棚に上げ嫁は掃き溜めからもらえ」 「餅は乞食に焼かせろ」 「想うて通えば千里が一里」 「三十六計逃げるに如かず」 などなど、知らなかったです。 三十六計とは兵法のことだそうですが、そもそもこれを知らなかったので二倍得しました。バカは得をする!バカ得!

不思議なのは、知らないことわざでも、何となしに意味がわかることです。 「想うて通えば千里が一里」は、初めて聞いたようで、実はどこかで似たようなことを、同じ意味のことを、違う言葉で聞いているんだと思います。 わたしの好きな小説に「会いたいか、会いたくないか。それが距離を決めるのよ」という、美しいセリフがあるのですが、これも想うて通えば千里が一里に通じますよね。 距離なんて大したこたぁなくて、苦に感じないものです。好きならば。ひゅーひゅー!

しかし、好きだからこそ会えるまでの時間をもどかしく想う、っていうのもありますね。 ことわざは、矛盾しているように思えるのも多いのです。「人をみたら泥棒と思え」がある一方で「渡る世間に鬼はいない」があります。 矛盾していないか?これは矛盾でなくて「立体交叉」しているのであり、すこしも衝突しない、と外山先生は言います。

ことわざに相反する命題のものがあっても、それはことわざの頭が悪いからではない。複雑な人間の現象にこまかく即応しようとした結果がそうなったのである。社会がひとすじでは行かぬということだ。

一つの論理にすがって生きていけるほど人生は簡単じゃないのかな!うんうん!

先にあげた「想うて通えば千里が一里」、だいたい一番最初に恋愛の話が思い浮かぶと思うのですけども、恋愛以外でも当てはまります。たぶん。 大げさだけど、人生もそうなのです。たぶん。 面白い時間は早く過ぎて、つまらない時間は、ほんとに時計が進んでいるのか疑ってしまうくらいに長く感じることってありますよね。人生は時間の集積。 面白いこと、楽しいことはあっという間に過ぎてしまうとは、うまく出来てやがるぜ、人生。 「あっという間の人生だった」って言って死にたいです。いえーいぴーすぴーす!

時代やジャンルを超えた普遍性のある事象を、語呂や語感の良い「言葉」で仕上げたもの、それがことわざなんだなーとおもいました。 しかしながら、言うは易く行なうは難し、ということわざもあるくらいで、分かっちゃいるけど隣の花は赤く見えちゃうもので、いくら教訓めいたことを知っていても、簡単に行動や考えに反映できないことも多々あります。 そういう時に人を慰めてくれるのもまた、ことわざのイイところですね。 仕方ないか、って思わせてくれるのです。

いやはや、ことわざはすごい。 (終わり良ければすべて良し!)