犬は月をめざす

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バードマン あるいは無知がもたらす予期せぬ奇跡

「人生はアップでみると悲劇だが、ロングショットではコメディだ」とは、かの有名な、プッチンプリンみたいな名前のちょび髭のおじさんの名言です。

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)は間違いなくコメディだと思うのです。のっけから主人公が宙に浮いているんです。主人公の初登場シーンがね、宙に浮いているんです!あぁ、ウワー、何だかよくわからないけどとんでもない映画だなぁと思わせるに足る笑撃的なシーンでした。

この映画、ほぼ1カットで撮っているように作られているらしく、ドキュメンタリーのような不思議な圧迫感がありました。
まるでそこで現実を見ているような感じ。
「人生は要約できねぇんだよ」と伊坂幸太郎の小説『モダン・タイムス』でのセリフですが、まさしく人生はカット編集できんのだ!という感じ。

さて面白いのが、さも現実を見ているようなリアリテイがありながら、何と主人公が超能力使えるんです。超能力ですよ!物を触らずに移動できるのです!しゅごい!しかしこの超能力があることを主人公は誰にも言っていませんし、見せてもいません。
だから本当に超能力があるかどうか判定のしようがない。
これ、娘が主人公に向かって「FacebookTwitterもしてないパパは存在しないの!居ないのと同じ!誰も気づかない!」みたいな事を吐き捨てるんですけど、見事にかぶりました。超能力も、演技も、相手に見せなければ無いのと同じ。うわー!なんて真実を突く鋭い言葉なんだ!
そういえば寅さんが似たようなことを言ってました。「思っているだけで何もしないんじゃな、愛してないのと同じなんだよ」って。さすが寅さんだ。しゅごい!

さてさて、主人公は別に何もしてないわけじゃないんです。レイモンド・カーヴァーという作家の作品の劇をやって、また一発ドカンと言わしちゃるで!という感じでやる気まんまんなのですけど、細々したことが色々あってとってもとっても大変。過去にバードマンとしてヒットしている主人公は、人から必ず過去の成功と現在を比較されます。過去と現在って比較可能なのかな?ああ難しそうなのでこれはパス!パース!
見るからに性格がキツそうなオバハン批評家さんからひっちゃかめっちゃかに言われた主人公が反撃で言う「芸術家になれないものが批評家になる、兵士になれないものが密告者になる」というセリフはとってもいい切れ味だと思いました。調べたらフローベルの言葉らしいです。

何かを作った人がいて、それをヤンヤヤンヤ批評するのはすでに後手です。どう足掻いても二番煎じです。作ったこと自体がすごいのだ。それを忘れて世の中は批評や評価をもてはやすんだ。盛り上がるもんね。いやごめんよく分かんない!

どうでもいいけど病院のトイレに座ってたバードマン(幻覚のほう)はウ○コしてたのかな?小さいほうかな?「お別れだクソ野郎」って言ってたからやっぱり大の方かな!!

効果音としても音楽としても、ドラムが最高にカッコいいし、小難しいセリフ(酔っ払いがマクベスの一節を大声で唱えてたり)やお洒落な言い回し(「お別れだ クソ野郎」)、意味がわからない超能力、俳優陣、好きな要素がてんこ盛りでとても好きです、バードマン。

そういえば上映中、エドワード・ノートン演じるマイクを見ながら、この人どっかで、どっかで見たことある…何だっけ、誰だっけ、どんな映画だったっけ、と上映中ずっーーーーーーーーーーーーーっと考えていて、結局分からなくて、上映後すぐさまググりました、はい、『ファイトクラブ』でしたどうもありがとうございました。ファイトクラブもとってもいい映画ですよ。みんな大好きブラピも出てるよ。

ラスト、窓から外をみる主人公の顔が良かったし、娘の笑顔もよかった。
コメディなんだから、最後は笑わないとね。
おしまい。