犬は月をめざす

もっとブワァー!ときてボーンと!

性格の明るい人はなにを照らしているのだろうか。

朝はお金をもらいにいくためにいそいそと起きて自転車にまたがり、まだあんまりあたたまってない空気を切り開きながら坂道を二回登り一回下って出勤。なにも考えないのがこの仕事のコツだと気付いたのは結構あとになってから。事務的に定型文を大量に口ずさんで退勤。いつもなら家に着いてる時間だけど今日は電車に揺られてる。車内には学生服とスーツと、あとよくわかんない格好の三種類。よくわかんない格好の自分。田舎の人間は電車に乗るのが下手。電車が着いたらすぐ乗ろうとするんだって。出さなきゃなにも入らないんだって。乗り慣れてるはずの電車に乗ったら乗り間違えてた。悔しいのでパンを食べて心の波を小さくする。煙草を吸う人はこのタイミングで煙草を吸うだろうか?という疑問もついでに咀嚼してみる。

欲しかったボトムスとタートルネックを買う。あと同じタイプのものを3セットくらい買えば今年の冬は着ていく服に悩んで遅刻して待たせるようなことがきっと無い、たぶん無い、無いと信じたい。私服にもユニフォームが必要だと思ったってことは誰にも惹かれないってことのような気がして、何かが遠のいたのがわかったけど追いかけなかった。

駅前には送迎バスから降りてくる陽気なサラリーマン。彼らの明るさはいったいなにを照らしてるのか気になったけどそれは確実に明日ではない。